この女神は植物、豊饒を司る自然神であり、ゼウスとの結婚は植物を実らせ、成熟させる「聖なる結婚」という特別なものと考えられていた。だが、彼女は好色家であるゼウスの浮気に腹をたて、彼の恋人たちへの嫉妬と憎しみを抱え、その間に生まれた子供たちに対しても残酷なまでの復讐に執念を燃やしている。
彼女のこの強い復讐心に最も苦しめられ、迫害され、気さえも狂わされたのが英雄ヘラクレスだ。女神アテナはヘラにヘラクレスに乳を与えるようにと説いたが、聞き入れずにいた。そのため、ヘルメスはヘラクレスを抱き、そっとヘラの寝室に忍び込み彼女の乳を吸わせ、ヘラクレスは不死身の身体を手に入れたとも言われている。
また、このときに零れ落ちた乳が天の川になったと言われている。
美術の世界ではヴェールをまとい、冠をかぶり、王笏と持ち、高貴な中年の母のような姿で、聖獣の孔雀を伴い、時には虹の女神であるイリスが世話係りとして、付き人ととなり表現されることが多い。女神の最高神でゼウスの妻である彼女だが、主役を演じる神話は非常に少ない。