ドリス人の英雄ヘラクレスとアカイア人の英雄テセウスは性格が対照的で、ヘラクレスは粗野で気が短く、ヘラにより気が狂っていることもあったが、実は正気の時でもスープが掛かったという理由で給仕を殺してしまうような乱暴な話も残っている。彼は当時、全世界を股にかけて暴れまわっていた。
一方テセウスは強く、紳士的でルールを守る温厚な人柄で描かれている。活躍の範囲はクレタ島や黒海などのそう遠くない世界での英雄である。
これは、アカイア人というのは、クレタ文明を受け継ぎミュケナイ文明を生み出したギリシア人であること、ドリス人はミュケナイ文明を破壊した乱暴さがあるというところからもきているようだ。アカイア人の中心都市アテナイでは自分たちの祖先であり、国王であったテセウスをヘラクレスに負けない英雄にしたいと願ったということも理由のひとつかもしれない。
アリアドネは島に取り残されてしまったが、このときちょうど酒神ディオニュソスがこの島に上陸しており、出会い、妻となった。このアリアドネの眠る姿や酒神との結婚は彫刻や絵画のモチーフに使われ、近代美術の主題となってもいる。