旅人、街道、交通を見守る富と幸運をもたらした神で商人や盗賊、雄弁の守護神とされ、ゼウスに仕えて神々の意志を伝える使者でもある。更には使者の霊魂を冥界に導く案内人の役目もになっているという。しかし、主役になることは少ない。ヘラに仕えていた百眼の巨人アルゴスの退治、メドゥサ退治の援助など、大抵脇役として控えている。
彼は幼少の時からずる賢く、いたずら好きであったとされ、寝床を抜け出して、アポロンが飼っていた牛の群れを盗み洞窟に隠し、そっとまた寝床に戻った。そのため、牛が居なくなっていることに気づいたアポロンが母親のマイアを責めた。しかし、マイアはこんな幼児がそんなことをするわけがないと抗弁した。この事実を知ったゼウスの命令により牛たちはアポロンに返された。
このお詫びにヘルメスは仮面の甲羅に弦を張った竪琴を作りアポロンに贈った。この話から、ヘルメスは竪琴の発明者ともされている。
死者の魂を冥界へと案内する役を担っている彼は、葬祭の儀式と深く関わっており、彼の姿は香油つぼや浮彫りなどに多く描かれている。
また世界の七驚異であるアルテミス神殿の円柱の下の部分にも彼の姿が彫刻されている。