神話と一緒に生きるギリシア人

ギリシア中部にあるパルナッソスの山の中腹にデルポイの神域という場所があり、ここはギリシア全土の信仰を集め、数多くのポリスの宝庫が建てられた場所である。そして、アポロンの神託の地では、多くの人々がギリシア各地からアポロンのお告げを聞くために集まり、病気や金銭に対する悩み、訴訟問題、他国との戦争など、さまざまな悩みや問題を解決するための場所として栄えていた。

アポロンの神殿にある帯状のフリーズ浮彫には神々の集会やトロイア戦争、神々と巨人の戦いなどの神話が表現されている。中でも有名なアクロポリスのパルテノン神殿の四方のメトープには、ギリシア人が好んだ四つの戦争物語である「神々と巨人の戦い」「ラピタイ族とケンタウロスの戦い」「ギリシア人とアマゾン族の戦い」「トロイア戦争」がある。更に東西にある大理石群像には女神アテナにまつわる場面も表現されている。

ギリシアにある数多いポリスはいずれも自分たちの守護神を持っており、神々を祭る町には奉納された彫像や祭壇、立派な神殿があり、建物や施設にも神々をたたえる物語があった。そして、人々の日常会話の中にも神々の名が登場した。親は神域の絵画や彫刻を前にして子供たちに英雄や神の話をし、自分たちの先祖の偉大さを教え育てた。そうして育った子供たちが、また子へと語り継いでいく、ここは学校であり、芸術を学べる場所であり、自分たちのアイデンティティを再確認する場所であった。

トロイの木馬

“トロイの木馬”とは危険だと思わせずに自ら招き入れさせる悪意あるプログラムのことで、今ではコンピューター用語のように扱われていますが、もともとはギリシャ神話にある「トロイア戦争」における戦況を一変させた罠からきた言葉です。

その作戦は、ギリシアとトロイアとの戦争で、なかなか戦況が変わらない状況でギリシアの英雄であるオデッセウスが立てた作戦で、木製の巨大な木馬を造りその中に兵士を隠れさせ、退散するから戦利品として受け取ってくれという意味でトロイア側の城門の前においておいて、それをトロイア側の城壁内に入れさせる作戦で、自ら場内にいれた木馬の中から兵士がでてきて、内側からギリシアの兵士を引き入れることに成功し、一気にトロイアを攻め落としました。

このギリシアが使った、相手を騙して陥れる作戦を総称して“トロイの木馬”といいます。

現代では、例えば、悪意のないメールやWEBサイトだと思わせておいて、ある部分をクリックすると知らないあいだにウイルスにかからせるようなマルウェアのことを総称してそう呼びます。

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